昭和37年改正

syugiin
昭和29年7月、法務大臣から法制審議会への「民法改正の要綱を示すように」との諮問を受けて、まず「第4編 親族」の改正が検討されました。
これに続いて昭和35年から、「第5編 相続」についての改正が検討されましたが、全面的な改正をするには相当な時間が必要となることから、取りあえず、以前から解釈上疑義があり実務に混乱をもたらしている問題について、先行して見直されることになりました。
昭和37年に改正要綱が法務大臣へ答申され、同年「民法の一部を改正する法律」が成立しました。

昭和37年改正の内容は以下のとおりです。

①代襲相続制度の見直し

・被相続人Aと養子Bが養子縁組をした時点で既に生まれていたBの子Cが、Bを代襲してAを代襲相続することができるのかについて、解釈が分かれていましたが、代襲者は被相続人の直系卑属でなければならない旨を明記することにより(民法第887条第2項ただし書)、CはAを代襲相続できないことになりました。

・当時の民法第888条第2項により、被代襲者が相続権を失った時に代襲者が未だ胎児としても存在しない場合は、代襲相続人となり得ないとされていましたが、同項を削除し、被代襲者が相続権を失った後に出生した子や縁組をした養子でも代襲相続できるものとされました。

 

※代襲制度の見直しについて、例えば長男である夫の死亡後も、家業を手伝っていた妻は、夫の両親が死亡しても一切相続できないのは実情に合わないことから、長男の妻にも代襲相続権を認めるべきだとの主張が、一部の実務家によりなされていましたが、慎重な検討を要するとされ見送られました。

②相続の限定承認・放棄の見直し

・詐欺、強迫による相続の限定承認・放棄の取消しの方法について、家庭裁判所に申述して行うことが明記されました。(民法第919条第4項)

・それまでは、相続放棄をした場合は「数人の相続人がある場合において、その一人が放棄したときは、その相続分は、他の相続人の相続分に応じてこれに帰属する。」との規定(民法第939条第2項)によって、放棄された相続分がどのように他の相続人に帰属するのかについての解釈が分かれていましたが、この規定が削除されて民法939条全体が改められました。

③特別縁故者への分与制度の新設

それまで、相続人の範囲を近親者に限定していたことから、相続人の不存在により相続財産が国庫に帰属する事例が出るようになったため、特別縁故者に対する財産分与の制度が新設されました(民法第958条の3)