法務省は、7月14日、「民法(相続関係)等の改正に関する中間試案」を取りまとめ発表しました。
これは、法務大臣の諮問に応じて、民法の相続関係に関する基本的な事項を調査審議するものです。
以下は、中間試案の概要です。

(1)諮問の内容

高齢化社会の進展や家族のあり方に関する国民意識の変化などの社会情勢にかんがみ、配偶者の死亡により残された他方配偶者の生活への配慮などの観点から、相続に関する規律を見直す必要があると思われるので、それらの要綱を示されたい。

(2)議論の概要

 ①配偶者の居住権を保護するための方策
1.短期居住権の新設

配偶者が、相続開始の時に遺産に属する建物に居住していた場合には、遺産分割が終了するまでの間、無償でその建物(以下、「居住建物」という。)を使用することができるようにする。

2.長期居住権の新設

配偶者が、居住建物を対象として、終身または一定期間、配偶者にその使用を認めることを内容とする法定の権利を創設し、遺産分割などにおける選択肢の一つとして、配偶者に長期居住権を取得させることができるようにする。

 ②遺産分割に関する見直し
1.配偶者の相続分の見直し

現行の法定相続分では、配偶者の貢献の反映が不十分との批判があるため、見直しの方向性として2案の提示

・甲案  被相続人の財産が婚姻後に一定の割合以上増加した場合に、その割合に応じて配偶者の具体的相続分を増やす。

・乙案  婚姻成立後、一定期間(例えば20年、30年)が経過した場合に、一定の要件(例えば当該夫婦の届出)のもとで、または当然に、法定相続分を増やす。

 2.その他の論点

可分債権の遺産分割における取扱いの見直し

 ③遺言制度に関する見直し
1.自筆証書遺言の方式緩和

財産の特定に関する事項については、自筆でなくてもよいものとする。

2.自筆証書遺言の保管制度の創設(遺言保管機関を設ける)
 ④遺留分制度に関する見直し

遺留分権利者の権利行使によって、遺贈または贈与の目的物について当然に共有状態(物権的効果)が生ずることとされている現行の規律を改め、遺留分権利者の権利行使により、原則として金銭債権が発生することとする。

 ⑤相続人以外の者の貢献を考慮するための方策

相続人以外の者が、被相続人の療養看護などを行った場合には、一定の要件のもとで、相続人に対して金銭請求をすることができるようにする。

 

この中間試案をふまえて、今後、本年7月12日から9月30日までパブリック・コメントの手続きが実施されます。