前回の公証人に続き、今回はその職務についてです。
公証人が提供する法務サービスには、大別して以下の3つがあります。
1.公正証書の作成
2.確定日付の付与
3.認証
1.公正証書
公正証書とは、個人または会社その他の法人からの依頼によって、公証人がその権限に基づいて作成する文書をいいます。
(1)効力・機能
公正証書を作成する目的あるいは効果としては、以下の3点があげられます。
①証明力
・公正証書は「公文書」であり、私文書に比べて証明力が高い。
※詳しくは、→2016/12/9の「公証制度」とは、何なのか?をご覧ください。
②執行力
・金銭の支払いを目的とする債務についての執行証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されている場合は執行力を有します。
「執行力」とは、例えばA・Bの離婚に際して、Aが養育費の支払いを約束したがその約束を守らなかった場合に、BがAの給料を差押えて強制的に支払わせる、すなわち強制執行ができる効力をいいます。
通常の場合、執行力を発生させるには裁判で確定判決を得るなど、裁判所を経由しなければならず、時間もお金もかかります。
しかし、執行力のある公正証書を作成することによって、権利を保全しその権利を迅速に実現することができます。
③安全性
・公証人によって文書の内容がチェックされることにより法的な不備がなくなります。
・原本が公証役場で保管されることにより紛失や改ざんを回避することができます。
(2)種類
①法律行為に関する公正証書
・各種契約
(例)債務弁済、賃貸借、離婚給付
・単独行為
(例)遺言
②事実実験公正証書
・公証人がその五感の作用により直接感得した事実に基づいて作成する公正証書で、証拠保全手段の一種です。
将来の争いを防ぐ目的で、現状をあるがままに確定しておくために、公証人が現地に赴いて確認した結果などを記載します。
(例)尊厳死宣言、貸金庫開披点検など、かなり多種多様
③公正証書によることが必要な法律行為
(例)任意後見契約、事業用定期借地権設定契約など
2.確定日付の付与
私署証書(私人の署名または記名押印のある文書)に、公証役場に備え付けられている「確定日付印」が押されると、その私署証書が確定日付印の日に存在したという証明になります。
3.認証
ある行為または文書が正当な手続・方式によって成立し作成されたことを公証人が証明します。
(1)定款の認証
株式会社などを設立する場合、定款を作成して、その書面に公証人の認証を受けなければなりません。
(2)私署証書の認証
①署名または記名押印の認証
・認証を受けた私書証書は、作成者の意思に基づいて作成されたという事実の証明になます。
日本人や日本の法人が、外国で生活したり企業活動をする場合の、身元保証書や契約書などに公的な信用を与えるという役割があります。
②宣誓認証
・平成10年1月1日から実施された制度で、その活用例として「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」の保護命令申立手続における利用があげられます。
さて、3回にわたって「公証制度」や「公証人」、そしてその「法務サービス」についてご紹介しました。
一番最初にもご紹介しましたが、「公証制度」は国民の私的な法律上のもめ事を未然に防ぎ、私的な法律関係を明らかにして安定させることが目的です。
みなさまも、紛争の未然防止のために、ぜひ「公証制度」をご活用ください。