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12月7日、「公証制度とその活用法 ~今どきの公証役場から~」というタイトルで、小倉公証人合同役場の公証人である野島香苗先生のお話をうかがいました。
現役で活躍されておられ、また数多くの事例を経験されている野島先生のおはなしは、大変おもしろくかつ有意義でした。
しっかり消化して、みなさまへのサービスに役立てたいと思います。

ところで、「公証制度」は皆さんの日常生活にはあまりなじみがないかもしれませんが、公正証書遺言なら聞いたことがあるんじゃないでしょうか。
あるいは、会社経営者の方であれば法人の設立のさいに「定款認証」で公証人さんのお世話になったかもしれませんね。

「公証制度」とは、国民の私的な法律上の紛争を未然に防止するために、書類作成などの方法によって一定の事項を「公証人」に証明させる制度です。
さて、この公証制度で何を公証、つまりは「公に証明する」のかというと、「法律行為」や「私権に関する事実」についてです。
「法律行為」とは、例えば土地や商品などの売買、建物の賃貸借や離婚給付などの契約であったり、あるいは遺言などもその一例です。
「私権に関する事実」の例としては、尊厳死宣言や貸金庫開披点検などをあげることができます。

なぜ「売買契約」や「遺言」を「公に証明する」必要があるのかというと、後日これらについてもめ事が発生することを未然に防ぐためなのです。
仮に、「売買契約」についてもめた場合、口約束しかしてなければ、契約の内容やその成立について証明することが難しいですよね。
そこで、後日の証拠のために売買契約書を作ることになります。

しかし、その「契約書」について争いが生じた場合、「文書」によってその権利を主張する者はその成立が真正であること、つまり本物であることを証明しなければなりません。
裁判では、争っている事実が嘘かホントかわからなくなった場合には、その事実はなかったものとされてしまいますから、証明する責任を負わされている方が立場は不利になってしまいます。

一方で、公務員が職務上作成した「公文書」は、真正に成立したものと推定されます。
その結果、「公文書」によって権利を主張する者は、その文書が本物であることを証明しなくても本物だと推定されます。
そして、その公文書につき争っている相手方はそれが偽物であることを証明しなければ、その公文書は本物として取り扱われることになります。
つまりは、私文書よりも公文書の方が証明力が高く、自分の権利を守るために有用だということになります。

そこで、法律行為その他の私権に関する事実について、公証人が「公正証書」という「公文書」を作成してくれることによって、国民の権利が保護され、また私的な紛争の予防になるというわけです。

次回は、公証人とその職務についてです。