少し前の話ですが、再婚禁止期間を定めている民法第733条の改正案が、平成28年6月1日に参議院本会議で可決され成立しました。

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改正前は、女性の再婚禁止期間が6か月でしたが、今回の改正によりこの禁止期間が100日に短縮されました。
また、①離婚時に妊娠していななかった②離婚後に出産した場合、100日の再婚禁止期間は適用されません。
このうち②の規定は改正前からありましたので、①の規定が今回の改正に伴い付け加えられたわけです。

再婚禁止期間の見直しは、明治31年(1898年)の民法制定以来初めてなのですが、なぜこのような規定が、しかも女性だけに課せられているのでしょうか?
それは、扶養義務を負う父親を早期に決めて、父子関係の安定させることで、生まれてくる子供の利益を図るためです。
そのために、「子供の父親が誰なのか」を法律上推定する「嫡出推定」という規定があります。

民法では、妻が「婚姻中に妊娠した子」は、夫の子と推定する、と定められています。
そして、「婚姻中に妊娠した子」として、以下の2つのケースをあげています。

①婚姻成立の日から200日を経過した後に生まれた子

②婚姻の解消または取消し後300日以内に生まれた子

では、夏子さんが春男さんと離婚直後に秋男さんと再婚して、再婚後200日経過後に冬彦くんを出産したらどうなるのでしょうか?
まず、秋男さんと婚姻後200日経過していますから、上の①の条件を満たし冬彦くんは秋男さんの子と推定されます。
次に、春男さんとの離婚後300日以内という②の条件を満たすことから、冬彦くんは春男さんの子と推定されますね。
これでは、父親の推定が二人に及んでしまってよろしくありませんから、女性に再婚禁止期間を設ける必要があったのです。

ところで、父親の推定が重複しないようにするには、再婚禁止期間は100日あれば良いわけです。
この規定が設けられたのは明治31年ですから、当時の妊娠判定技術からすれば再婚禁止期間が100日では混乱を招くので6か月にしようということになりました。
しかし、昨年12月に最高裁が、再婚禁止期間のうち100日を超える部分は合理性を欠いた過剰な制約で違憲である、と判断をした結果のよって今回の法改正に至りました。

その背景には、結婚に関する価値観の変化や妊娠判定やDNA鑑定などの科学の進歩があります。
今回最高裁は再婚禁止期間の「100日間」は合憲と判断しましたが、期間短縮ではなく「再婚禁止期間」や「嫡出推定」の撤廃論も盛んです。
これらについては、まだまだ議論を尽くしていく必要がありますし、今後も法改正が行われるかもしれませんね。