法務省は、相続登記を促進するために不動産登記規則を改正して、「法定相続情報証明制度」(仮称)を新設することなりました。
来年1月末までパブリックコメントを募集し、平成29年度の早期に実施する予定となっています。

さて、この「法定相続情報証明制度」とは、どのような制度なのでしょうか?

土地や建物などの登記名義人(所有者)が亡くなった場合には、所有権の移転登記(相続登記)をすることになります。
しかし、相続登記を含む所有権移転の登記がなされず、放置されている不動産が増加しており、
これら登記未了不動産の増加が、所有者不明の土地や空き家問題の一因となっています。

このため、政府としても相続登記の促進に取り組むことが閣議で決定されたわけですが、その具体策の一つがこの新制度です。

<法定相続情報証明制度(案)の概要>

(1)申出(法定相続人または代理人)

 ①戸籍謄本や除籍謄本などを収集

 ②法定相続情報一覧図の作成

 ③申出

※提出された戸除籍謄本などに記載された情報に限り記載され、相続放棄や遺産分割協議などの情報は、記載されません。

※数次相続発生の場合は、一人の被相続人ごとに作成しなければなりません。

(2)確認・交付(登記所)

 ①登記官による確認、法定相続情報一覧図の保管

 ②認証文付き法定相続情報一覧図の写しの交付、戸除籍謄本などの返却

※交付に当たり、手数料は徴収されません。

※偽造防止のため、地紋紙で交付されます。

(3)利用

 ①各種相続手続への利用

※戸籍の束の代わりに各種手続において「法定相続情報一覧図の写し」を提出することが可能になります。

※相続放棄や遺産分割協議の書類は、別途必要です。

さて、この制度の新設によって何が大きく変わるのかというと、上記の概要の(3)利用についてです。

現状、登記所での相続登記や金融機関での相続手続きにあたって、相続人を確定するために必要な戸籍謄本などの提出が求められていました。
そして、この「戸籍書類一式」は、被相続人の口座がある金融機関ごと、相続登記の場合は相続の対象となる不動産の管轄法務局ごとに必要となります。
したがって、同時に複数の相続手続きをする場合には、「戸籍書類一式」を複数用意しなければなりません。
すると、戸籍の収集に余分な費用がかかることになりますので、1セットの戸籍で1件ずつ手続きを進めていくことになります。
しかし、この方法だと手間も時間もかかってしまいます。

新制度の下では、戸籍を収集するところまでは以前と同じですが、収集した戸籍などをもとに「法定相続情報一覧図」を作って登記所に申出ると、
登記官が確認のうえ保管してくれることになり、その「写し」を交付してくれます。
この「法定相続情報一覧図の写し」をもって、「相続人確定のために必要な戸籍書類一式」の提供に変えることができるのです。

つまり、「収集した戸籍書類一式」をいちいち手続き先に提出する必要がなくなり、戸籍の束に代わって「法定相続情報一覧図の写し」を提出すればよいことになります。
この「写し」を複数交付してもらえれば、複数の相続手続きを同時に行うこともできます。

また、金融機関の負担軽減もみのがせません。
今までは、それぞれの相続手続き先において、戸籍謄本などを読解して相続人を確定していました。
この作業に費やす時間と労力が、相続手続きに時間がかかる一因であったと考えられます。
「法定相続情報一覧図の写し」によって、相続人の確定作業は必要なくなりますので、金融機関などでの手続時間の短縮が期待されます。

しかしながら、相続手続きにおいて一番最初にやらなければならず、かつ大変な作業である戸籍謄本などの収集は、依然として相続人がしなければなりません。
福岡の司法書士・行政書士アワーズ事務所では、戸籍の収集をはじめとする相続手続きのサポートをしています。
初回相談は無料ですから、お気軽にご相談ください。