Cさんから、先日亡くなった祖母Xさんの相続について、遺言書と遺留分の関係はどうなっているのかというご相談がありました。
まず、Xさんの相続関係を説明すると、配偶者(相談者の祖父)Yさん、長女(相談者の母)Aさんと長男(相談者の叔父さん)BさんはXさんより先に亡くなっています。
したがって、Xさんの法定相続人は孫のC、D、E、Fの4人であり、その法定相続分はそれぞれ4分の1ずつということになります。
ところで、Xさんは自筆証書遺言を残していましたので、家庭裁判所で検認手続きをして開封しました。
遺言の内容は、
(1)Xさんの財産はすべてEさん一人に相続させる。
(2)葬儀、法事、お墓の費用はすべてEさんが負担する。
というもでした。
さて、この遺言書は間違いなくXさんが自分の意思で書いたものであり、法的にまったく問題はなかったとします。
この場合、Eさん以外の孫C、D、Fさんの3人は何ももらえないとなると、ちょっと不公平ですね。
そこで、直系卑属(被相続人の子や孫)については法定相続分の2分の1が遺留分と定められています。
上記のケースでは、孫はみな同じ4分の1の法定相続分を持っていますので、遺留分は各8分の1になります。
つまり、CさんたちはXさんの遺産の8分の1をもらいたいと主張することができることになります。
遺留分は、もらいたいと主張してはじめて、その効力が発生します。
この主張をすることを遺留分減殺請求といいますが、主張するかしないかは本人の自由ということです。
上記の例で、Xさんの遺産が1,000万円、Dさんだけが遺留分減殺請求をし、CさんとFさんは遺留分減殺請求をしなかったとします。
するとそれぞれの取り分は、
Cさん、Fさん・・・0円
Dさん・・・1,000万円×1/8=125万円
Eさん・・・1,000万円-125万円=875万円
※上記の計算では、Eさんの負担する葬儀その他の費用は勘案していません。
となります。
以上を整理します。
(1)法定相続人が数人いるにもかかわらず1人に相続させる、という他の法定相続人の遺留分を侵害する内容であっても、その遺言は有効である。
(2)遺留分を侵害された法定相続人は、その権利を行使するかどうかは各人の自由である。
(3)遺留分減殺請求がなされると、遺言はその遺留分を侵害する限度において無効となる。
次回は、具体的な遺留分の計算の仕方についてです。