昭和55年改正において検討されたが見送られた事項

昭和55年改正の際には、次の事項についても検討されましたが、以下のような問題点があることから、その採用は見送られました。

①配偶者の法定相続分の引上げに代わり夫婦財産の制度を別産生から共有制に改める

法定の夫婦の財産制度を別産制(民法第762条第1項)から共有制に改め、婚姻中に形成された財産は、いずれの収入によるものであっても、全て夫婦の共有財産となるものとすること
【問題点】

ア)夫婦の一方の債務についても夫婦が共同で責任を負うことになる。

イ)共有財産の処分を夫婦の一方が単独ですることができない。

ウ)共有財産の管理や分割、債務者その他の第三者との関係が複雑になる

②配偶者の相続分を一律に引き上げるのではなく、婚姻年数や子の数などに応じて規律を分けること

【問題点】

ア)形式的に婚姻期間が長期に及ぶ場合でも、婚姻関係が実質的に破たんしている場合など、必ずしも家族関係の実態にあったものになるとは限らない。

イ)婚姻年数、子の数などの各要素に応じて段階的な定めをすると、これらが競合することによって相続関係が複雑になる。

③相続財産から一定額を生存配偶者に先取りさせる制度を取り入れること

【問題点】

ア)相続額が少額である場合は、他の相続人の取得額がわずかになるかまったく無くなってしまい、配偶者以外の相続人の利益を害する。

イ)先取り額や範囲について合理的な内容を定めることが困難である。

④配偶者がいる場合には兄弟姉妹の相続権を認めないものとすること

【問題点】
被相続人に代わって家業を助けてきた兄弟姉妹、農村地帯に居住して被相続人と生活の関わりが深い兄弟姉妹がいることが想定され、兄弟姉妹の相続権を否定するのは相当でない。

⑤配偶者の居住権を保護すること

【問題点】

ア)居住権の法的性質、相続分との関係、居住権の及ぶ範囲など、合理的内容を定めることが難しい。

イ)生存配偶者の一身専属権と解釈せざる得ず、現行法にない特殊な用益権を設定することになり、その当否が問題である。

⑥相続人以外の者に寄与分を認めること

【問題点】

ア)家庭裁判所における遺産分割の手続に相続人以外の者をどのように関与させるのか。

イ)遺産分割をした後の寄与分請求権を認めた場合、共同相続人全員に対する請求を認めるのか、既にされた遺産分割に対する影響をどのように規律するのか。

⑦配偶者に代襲相続を認めること

【問題点】

ア)代襲相続の本質に適合するのか疑問である。

イ)配偶者の死亡後の他方配偶者の生活状況はさまざまであり、すべての夫婦間で代襲相続を認めることはかえって衡平に反する恐れがある。

ウ)一定の要件のもとに代襲相続を認める場合、その要件を合理的に定めることが困難である。

⑧嫡出でない子の相続分の同等化

昭和54年の改正要綱試案に盛り込まれていましたが、時期尚早であるとして、要綱では除外されました。