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先日は、相続人不存在についてお話させていただきましたが、今日は権利能力なき社団についてです。
一連の報道によると、花柳流花柳会に関して、理事会だとか総会などが登場してきます。
そこで少し調べてみたのですが、花柳流花柳会は法人化されてはいないとのこと、つまり「権利能力なき社団」です。

さて「権利能力なき社団」とは、社団(一定の目的によって結集した人の集団)としての実質はあるけれども、
法律上の要件を満たさないことから法人として登記できないか、またはこれを行っていないために法人格をもたない団体をいい、「任意団体」といったりします。
例としては、法人化されていない町内会やマンション管理組合などが挙げられます。

さて、この花柳流花柳会という団体は、なかなかの巨大組織でして、花柳流の宗家家元とすべての名取が会員であり、その数は、約21,370人(平成23年6月現在)です。
これだけの規模の団体が「権利能力なき社団」なのには、少し驚きました。
もちろん、「権利能力なき社団」であることが、悪いことではありません。
「花柳流」等名称抹消等請求事件:東京地裁平成23年(ワ)18147・平成24年6月29日判決からもわかるように、しっかりした会則を制定して、名誉会長・理事及び監事等の役職、総会・理事会に関する事項などを定めています。
そして、理事の互選で理事長を選び、理事長が花柳流花柳会を代表することから、代表者の定めのある権利能力なき社団ということになります。

ということで、あまり聞いたことはないが実は身近に存在する「権利能力なき社団」の特徴を少しばかり。

まず、権利能力なき社団は、それ自体は権利能力を有していないため、権利・義務の主体になりません。
するとその団体の財産はどうなるのかというと、判例上は構成員全員の「総有」であるとされます。
総有とは、財産の共同所有の一形態で、団体の構成員は財産の使用収益権をもっているが、団体的拘束力が強いので、個々の構成員の持分権の大きさを観念することが困難であり、個々の構成員が共有財産の分割請求や自己の持分の処分をすることができないものをいいます。
例えば、XさんがA会を脱退するときに、「私はこのA会の創業からかかわってその発展に大いに貢献したんだから、相応の貢献した分をA会の財産から払い戻せ!」とは、請求できないことになりますね。

民事訴訟法上は、「代表者または管理人の定めがあるもの」については、その名において訴え、また、訴えられることができます。
つまり、花柳流花柳会の場合は、理事長という代表者の定めがありますので、「花柳流花柳会」の名において裁判の原告または
被告になることができます。
代表者があれば、訴訟上は普通の法人と変わることろはないことになりますね。

法人税法上は、「人格のない社団等」として法人とみなされますので、収益事業を行う場合は納税義務があります。

不動産登記においては、権利能力なき社団の名義では登記できません。
ではどうするのかというと、代表者個人名義か構成員全員の共有名義で登記することになります。
実際には、代表者個人名義で登記して、代表者が交代すると権利移転の手続きによって書き換えることになります。